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zoom RSS 講演会「山岳信仰の歴史と民俗」を開催

<<   作成日時 : 2017/07/17 14:33   >>

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友の会今年度第2回目の講演会『山岳信仰の歴史と民俗』が7月9日に開催されました。講師の鈴木正崇先生は慶應義塾大学名誉教授であるとともに日本山岳修験学会会長さらに日本山岳会にも所属し、自ら山に登り、世界の民俗研究を行ってきた方です。

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 「山の日」の制定など最近の日本における山岳に対する関心は高くなってきているように思えます。現在、その多くはスポーツ登山や観光資源としての山岳への関心が中心ですが、かつての日本においては、人びとは「山」に対して、崇高な畏敬の念をもち、神のいらしむ場としての信仰心も強く、山岳信仰は日本の精神文化の根底にあると考えることもできます。鈴木先生は、講演の最初に、こうした山岳信仰に対する意識の変化を考えることで、日本の近代化の意味を浮かびあがらせることができるのではないか述べました。以下、当日の資料に沿って、講演の概要をなぞってみます。

@山の信仰=日本の山々は里からほどよい距離にあり、暮らしの中に山が溶け込み、人々は山に親しみと畏敬の念をいだき、多様な信仰が生まれた。山は日本人の精神文化を育んできたともいえる。
A開山伝承と神仏混淆=日本の山の信仰の特徴は神仏混淆である。仏教の伝来以来、修行の場として山林に寺院が建設された。現在も残る寺院の「山号」はその思想である。明治維新による「神仏判然令」による神仏分離がこの状況を激変させたが、それ以前の長期間にわたる仏教の土着化、展開と創造の長い歴史がある。各地の山の開山伝承は伝説化されているが、国家の起源と重ね合わせる意図的な遡及史観でその正当性を強めている場合も多い。

B神仏習合の思想= 日本の山には仏菩薩や仏教思想にちなむ名前が多い。山に登ることは神や仏と出会い、願いをかなえてもらうことだった。平安時代以来、神と仏は、本地(本源)を仏菩薩、垂迹(仮に現れる姿)を神とする神仏習合思想で統合されていた。各地に修験僧が活躍したが、その歴史が多くの山々の名称に残っているといえる。
C山の意味づけ=山中の様々な風景や景観が、「地獄」や「極楽」「浄土」として意味づけされ、現在でも山中の地名に残っている。修験では山全体が修行の場であり、山全体が曼荼羅であった。

D修験道の展開=仏教の山岳修行の内容を体系化し、峰入り修行の中で得た霊力を取り込み、里で祈祷、除災、招福、治病などの活動を行ったのが修験道である。
E山の信仰と農耕民=山の中には多くの社があり寺院もある。元来は山中の巨岩、大樹、湧水、湖沼、洞窟など自然物に対する祭礼の場であったものである。自然と一体になって生活していた人々にとってはこうした自然の中での神々との交流、崇拝は当然のことであった。高山に残る雪形で季節を占うように、山の神は稲作などの農耕の守護神であり、海の幸の源泉でもあった。また、先祖の霊が見守っている場でもあった。

F山の信仰と狩猟民=山を生活の場とする狩猟民は山に対する独自の宗教観を伝えている。入山に際しての儀式やおきて、動物や植物に対する神聖な信仰があった。
G基盤しての山中他界観=山への信仰の基盤には他界観がある。山には神の連想が伴い、人びとが亡くなったあとに霊魂が赴く場であると信じられてきた。日本中に死後の霊が集まるとされる山がたくさんある。
 
H祭祀から登山へ=もともと山は聖域とされ、禁足地とされていた。やがて、山への信仰が祭祀から登拝(参拝登山)へと変化してきた。特に江戸時代には民衆の経済力上昇に伴い山岳登拝が盛んになり、富士講や大山講、御嶽講などが組織化され、多くの人が参加することになった。
I山岳信仰から近代登山へ=日本の近代登山は明治初年に始まる。第一次、第二次、第三次と登山ブームがおこるなかで、近年は、山岳信仰への関心も復活している。特にユネスコの世界遺産登録で2004年の「紀伊半島の霊場と参詣道」では大きな論争が起こった。2013年には「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」が指定された。その他に、日本国内でもいくつかの山岳霊場を「日本遺産」として登録する動きが始まっている。観光資源化が進む中で山岳信仰は新たな岐路に立たされているといえる。
 (筑井信明 記 文責:編集員会)
 

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